ジム・コリンズ「ビジョナリー・カンパニー」時代を超える生存の原則
著者:ジム・コリンズ/ジェリー・ポラス
本書からピックアップ
ビジョナリーカンパニーの「時を刻む時計」の重要な要素は基本理念、つまり単なる金儲けを超えた基本的価値観と目的意識である。基本理念は、組織の全ての人々の指針となり、活力を与えるものであり、長い間ほとんど変わらない。
企業が「正しい」基本理念や「好ましい」基本理念を持っているかどうかではなく、企業が好ましいにせよ、好ましくないにせよ、基本理念を持っており、社員の指針となり、活力を与えているかどうかである。
基本理念は企業の内部にある要素であり、外部の環境に左右されるものではない。ビジョナリーカンパニーの基本的価値観は、理論や外部環境によって正当化する必要などないものである。時代の流れや流行に左右されることもない。市場環境が変化した場合ですら変わることはない。
1. 感想
「時を刻む時計」という概念の本質
- 「ビジョナリー・カンパニー」の核心として語られる「時を刻む時計」という概念は、企業が市場の変化に適応するだけでなく、変わらない基本理念を持ち、それを指針としながら成長していくという考え方です。
- これは、一時的な成功に満足せず、長期的に存続し続ける企業の共通点を示しており、企業の成功=「環境適応能力の高さ」だけでなく、「普遍的な価値観を持ち、それを実践し続けること」こそが本質的な強さであることを示唆しています。
- Apple、Google、トヨタなどの世界的企業を見ても、彼らは単なる市場の変化に適応するだけではなく、「何のために存在するのか?」という根本的な問いに対する明確な答えを持ち続けています。
企業の目的は基本理念を貫くこと
- 企業の目的は利益を上げることではなく、基本理念を貫くことにある、という考え方が印象的です。
- 利益は結果であり、目的ではない。このことをドラッカーは、企業の目的は顧客の創造であると言っています。短期的な収益を優先する企業は、市場の変動によって方針が揺らぎ、結果として組織が迷走することに繋がる。しかし、本当に強い企業は、「何をすべきか」という問いに対し、時代に左右されない価値観を持ち続けています。
- 本書の示す「ビジョナリー・カンパニー」の姿は、一時的な成功に囚われず、普遍的な価値を大切にする企業が最終的に長く生き残ることを示唆しています
「基本理念の有無」が企業の生存を左右する
- 興味深いのは、「基本理念の正しさ」ではなく、「基本理念があるかどうか」が重要であるという指摘です。つまり、「好ましい理念かどうか」ではなく、「社員にとって指針となる理念を持ち、それが組織で活力を生むかどうか」です。つまり、基本理念に一貫性があり、組織の一員がそれを信じ、日々の業務に反映しているかどうかが大切ということ。
- 例えば、Amazonの「地球上で最もお客様を大切にする企業」「地球上で最も安全な職場を提供することを目指す」という理念は、シンプルですが、これがあるからこそ、創業から現在に至るまで一貫した経営方針を貫けているのではないでしょうか。
- 「好ましい理念かどうか」を気にするより、「企業として何を大切にし、それを社員が信じて行動できるか?」を考えることが、持続的な成長のカギとなるのだと思います
2. この言葉の活かし方
「時を刻む時計を持つ」 → 組織の普遍的な価値観を明確にする
具体的な活かし方
• 市場の変化に振り回されず、何を軸にするかを定める
• 社員が共感し、行動に落とし込める理念を打ち立てる
実践例
経営コンサルティング会社が「単なる売上アップの手法を提供する」のではなく、「中小企業の経営者が持続的に成長できる仕組みを作る」ことを基本理念に据えるとする。
これが明確になれば、提供するサービスも単発の施策ではなく、長期的な伴走型支援にシフトできる。市場の変化があっても、根本的な方向性はブレない。
「基本理念があるかどうか」 → チームの行動指針を策定する
具体的な活かし方
• 単なるスローガンではなく、日々の業務に落とし込む
• 経営判断の軸として、理念を実際の意思決定に活用する
実践例
ある企業が「顧客第一主義」を掲げるなら、社員の行動指針として「どんな状況でも顧客の期待を超える提案をする」などの具体的な方針を作る。また、新規事業を検討する際にも「この事業は理念に沿っているか?」というフィルターを通して意思決定を行う。
「短期的な利益より理念を優先する」 → 長期的視点を持つ
具体的な活かし方
• 組織文化の形成に注力し、理念の共有を深める
• ブランディングやマーケティングでも理念の一貫性を重視する
実践例
スターバックスは、単なるコーヒー販売ではなく、「人と人とのつながりを生みだす」という理念を大切にしている。そのため、顧客体験を重視するブランディングを貫いている。
同様に、自社の事業においても、理念を軸に「何をするか」よりも「なぜやるのか」を重視した戦略を立てることで、長期的な成功を目指せる。
まとめ
本書の教えは、単なる「企業の成功法則」ではなく、「時代を超えて存続する企業とは何か?」という本質的な問いを投げかけています。
• 市場環境が変化しても、変えてはならない基本理念があるか
• 基本理念は「正しいか」「好ましいか」ではなく、社員の「指針」となり「活力」を生み出しているか
本書の示す「普遍的な価値を持ち続ける」という考え方こそが、長期的な成長を可能にする鍵なのではないでしょうか。
あなたの企業では、「時を刻む時計」となる基本理念はあるでしょうか?それを組織の末端にまで浸透させることができれば、ビジョナリー・カンパニーに近づくことができるのかもしれませんね。
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