ケン・ブランチャード「ザ・ビジョン」
著者:ケン・ブランチャード
本書からピックアップ
目的とは、組織の存在意義である。目的とは、単に事業の内容を述べたものではなく、「なぜ」と言う問いに答えるものである。偉大な組織は深遠で崇高な目的、すなわち社員の意欲をかき立て、やる気を起こさせるような有意義な目的を持っている。表面的な言葉遣いより、そこから人々に伝わる意味の方が重要である。
目的がなぜを説明するものだとしたら、価値観は目的達成の道筋を示すものである。つまり、目的を達成するために、日々どのように行動すればよいかを教えてくれるものなのだ。
なくしたいものではなく、手に入れたいものに集中するとイメージの力はますます効果を発揮する。最終結果に到達するプロセスではなく、最終結果そのものに焦点を絞ったとき、イメージの力は効果を発揮する 。
説得力あるビジョンかどうかを確かめるチェックリスト
・そのビジョンは自分たちの使命をはっきりさせてくれるか
・そのビジョンは日々の決断を正しく行っていくための指針になり得るか
・そのビジョンは目指すべき未来を目に見えるような形で描いているか
・そのビジョンは永続性があるか
・そのビジョンにはライバルに勝つと言うだけではない何か崇高なものがあるか
・そのビジョンは数字の力を借りずに日々に活気を吹き込むことができるか
・そのビジョンはあらゆる人の心と精神に訴えかけるか
・そのビジョンは一人ひとりに自分の役割を自覚させるか
1. 感想
「目的」は単なる事業内容ではなく、「なぜ」の問いに答えるもの
- ケン・ブランチャードが主張する「目的とは組織の存在意義である」という考え方は、多くの企業や個人が見落としがちな本質的なポイントです。単に「何をする会社か」ではなく、「なぜそれをするのか?」が組織の核となるという視点は、サイモン・シネックの「ゴールデンサークル理論(Why→How→What)」とも共通しています。
- 偉大な組織が「深遠で崇高な目的」を持っているという指摘は、AppleやTeslaなどの企業文化にも当てはまります。彼らは単に製品を作るのではなく、「世界を変える」という大義を掲げています。
- このように、組織の目的が単なる利益追求ではなく、社会的意義を持つとき、社員のモチベーションが高まり、企業文化が強化されることがわかります。
目的だけでなく、「価値観」が道筋を示す
- 「目的が「なぜ」を示すものなら、価値観は目的達成のための日々の行動指針である」という考え方は、リーダーシップの実践において極めて重要です。多くの企業はビジョンやミッションを掲げますが、それが単なるスローガンになり、具体的な行動に落とし込まれていないことが課題となります。例えば、「顧客第一」というスローガンがあっても、現場の従業員がそれをどう実践するか明確でなければ形骸化してしまいます。
- 価値観がしっかりと定義され、それに基づいて社員が日々の意思決定を行える環境を整えることが、持続的な組織の成功につながるのです。
「なくしたいもの」ではなく、「手に入れたいもの」に集中する
- この考え方は、目標達成の心理学的な側面に通じています。人は「失敗したくない」と考えるよりも、「成功を実現する」と考えた方が行動のエネルギーが高まることが研究でも示されています。
- 例えば、スポーツ選手は「ミスをしないように」と考えるのではなく、「最高のプレーをする」と意識することでパフォーマンスが向上します。同様に、企業の戦略も「市場シェアを奪われないようにする」ではなく、「新しい市場を創造する」とポジティブな目標を設定することで、より創造的なアイデアが生まれるでしょう。
説得力のあるビジョンの条件
- チェックリストとして示された8つのポイントは、企業や組織がビジョンを策定する際に非常に実践的なガイドラインとなります。特に、「ライバルに勝つことだけではない崇高なものを持っているか」という視点は重要です。単に競争に勝つことを目標にすると、組織の文化が短期的な成功に偏り、長期的な発展が阻害される可能性があります。
- 優れた企業は、競争を超えた独自の価値を生み出すことで、持続可能な成長を遂げています。
2. この言葉の活かし方
「目的とはなぜの問いに答えるもの」 → 組織の存在意義を明確にする
具体的な活かし方
• 目的が単なる事業内容の説明になっていないか見直す
• 社員がその目的に共感し、行動に反映できるような仕組みを作る
実践例
ある飲食チェーンが「美味しい料理を提供する」ことを目的に掲げるのではなく、「人々の心をつなぐ食の場を提供する」とすることで、単なる飲食業から、より広い社会的意義を持つ企業へと変化できる。これにより、社員の働き方や顧客との関係構築にもポジティブな影響を与える。
「価値観は目的達成のための行動指針」 → 価値観を日々の意思決定に落とし込む
具体的な活かし方
• 従業員が価値観に基づいた判断をできるよう、具体例を共有する
• 価値観に基づいた意思決定が適切に評価される仕組みを作る
実践例
ある企業が「誠実さ」を価値観として掲げる場合、社員が誠実な対応をしたときに、それが評価され、フィードバックされる仕組みを作る。また、経営判断の際にも「この決定は我々の価値観に合致しているか?」という視点を必ず取り入れる。
「なくしたいものではなく、手に入れたいものに集中する」 → 目標設定の方法を変える
具体的な活かし方
• ネガティブな表現ではなく、ポジティブな言葉でビジョンを描く
• 成功のイメージを具体的に持ち、チームで共有する
実践例
営業が「クレームを減らす」ではなく、「お客様の満足度を高める」ことにフォーカスする。これにより、単なる問題回避ではなく、積極的な価値提供に意識が向かう。
「説得力のあるビジョンを持つ」 → チェックリストを活用し、ビジョンを強化する
具体的な活かし方
• ビジョンを単なる言葉で終わらせず、実際の戦略や行動に落とし込む
• ビジョンが社員全員に浸透しているかを定期的に確認する
実践例
企業のミッションを「売上No.1を目指す」から「業界をリードし、社会に貢献する企業へ」と再定義することで、社員のモチベーションを高め、持続可能な成長を促すことができる。
まとめ
本書の示すビジョンの概念は、単なるスローガン作りではなく、組織や個人の方向性を明確にし、それを実行するための指針を与えるものです。
• 価値観は目的を達成するための行動指針である
• 目標は「なくしたいもの」ではなく、「手に入れたいもの」に焦点を当てる
• 説得力のあるビジョンには、社員を動かす力がある
この考え方を取り入れることで、組織だけでなく、個人のキャリアや目標設定にも応用できるでしょう。あなた自身の「なぜ」は何でしょうか?それを明確にし、価値観と行動指針を定めることで、より意義のある仕事や人生を築くことができるはずです。
「私の読書メモ」でご紹介した本
[新版] ビジョン:やる気を高め、結果を上げる「求心力」のつくり方(Amazon)
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