超長寿化時代の市場地図
多様化するシニアが変えるビジネスの常識 私の読書メモを紹介します。
著者:スーザン・ウィルナー・ゴールデン
目次
• 1.本書からピックアップ
• 2.感想
• 3.この言葉の活かし方
• 4.まとめ
• 5.私の読書メモで紹介した本
1.本書からピックアップ
新たな言語を生み出し、年齢からステージへとマインドセットを切り替えるべき理由の1つが、エイジズム(年齢差別)と戦うためだ。エイジズムの核心にあるのは、65歳を過ぎた人は経済的に自立できなくなり、日常生活も世話が必要で、体は弱く病気がちになり、在宅介護が必要になるんだろうと言うステレオタイプな思い込みだ。
引退と言う概念には引退してもらおう。健康な高齢者は引退を望んでいない働きたいのだ。こうして65歳で定年退職して引退と言うのは時代遅れになっている。従来の引退、すなわち定年退職のステージに変わるのは以下のようなステージだ。
・方向転換:キャリア優先の人生から新たな目的へと軸を移す。
・再発信:人生の新たな章を始めるための活動を行う(学習など)。
・移行:ある属性から別のものへと自分のアイデンティティーを移行する。
・人生の優先順位の再設定:新たな優先順位と目標に向けて、価値観を再構築する。
長寿人口の拡大は、あらゆる業界にとってイノベーションへの好機だと言える。例えば、生涯学習は新市場となるはずだ。人生が長くなる中で、教育や仕事に対する既存のアプローチは変化を迫られる。長く働き続ける人材が増えれば、セカンドキャリアどころか、第3、第4のキャリアに向けたリスキリング(学び直し)が必要になる。
カスタマーだけでなく、従業員ともステージについて対話することで、クリエイティビティーを高め、自社の商品サービスの社会的影響も高められる。「定年退職者」や「高齢者」の話はやめて、人生の「方向転換」や「復活」のステージの会話をしていこう。
2. 感想
「引退」という概念そのものがアップデートされる時代
- 著者は、「引退という言葉に引退してもらおう」と提案しています。これまでの人生設計は、働いて、定年で引退して、老後を迎える。という一本線のストーリーが前提でした。しかし人生100年時代、65歳は決して「終わり」ではなく、むしろ新しい目的に向かって再出発するステージの入口です。
- 著者が指摘するように、今後求められるのは、定年後の人々を「役割を終えた存在」と見るのではなく、「これから価値を再構築する存在」と捉える視点です。これは、人間観の更新であると同時に、企業や社会のあり方そのものに対する挑戦です。人生後半のステージを“静的”にではなく、“動的”に捉えることが、個人と社会の活力を支えるのだということです。
年齢ではなく「ステージ」で語ることで見えてくる可能性
- 「高齢者」や「定年退職者」という言葉には、無意識のうちに“終わった人”というイメージが付きまといます。しかし著者は、それを「方向転換のステージ」「優先順位の再設定のステージ」などと語り直すことで、人の持つ力や希望にフォーカスを当てる視点の転換を提案しています。これは単なる言葉遣いの話ではありません。言葉を変えることで、人に対する見方が変わり、接し方が変わり、提供する商品やサービスも変わっていきます。
- マーケティング、人事制度、キャリア支援など、年齢に頼らず、今どんな局面にあるかで語ることが、本人の自尊心を高め、周囲の期待と可能性を呼び戻します。この語り直しの力こそが、本書の核心だと感じました。
長寿社会は“挑戦の回数が増える”社会でもある
- これまでの人生観では、「キャリアのピークは40代〜50代」とされてきました。しかし本書は、「第2、第3、第4のキャリア」さえ当たり前になる時代が来ると予言します。リスキリング、生涯学習、副業、転身。これらは高齢者の延命策ではなく、「挑戦の回数が増える社会で、自己実現のルートを柔軟に編み直すための手段」であると再定義されます。
- つまり、年齢に関係なく、自分の価値を再設計できる社会こそが、持続可能な社会であり、それを支える商品・サービス・制度が今、強く求められている。企業も行政も、“何歳向け”ではなく“どんな転機にいる人向け”かという視点で、あらゆる設計を見直す必要があります。
3. この言葉の活かし方
「定年後=終わり」ではなく「新たな挑戦の開始」と捉える発信をする
具体的な活かし方
• 社内でも、「引退」や「卒業」ではなく、「新しい役割への転身」「価値観の再構築ステージ」などの言葉で語る
実践例
再雇用制度やシニア起業支援を、「60歳からの社会参加」といった受け身の設計ではなく、「これからやってみたいことに挑戦する支援制度」として制度設計・発信を行う。
社内の人材マネジメントでも“ステージ”の視点を導入する
具体的な活かし方
• 中高年社員とのキャリア面談で「あなたは今、どんなステージにいますか?」と問いを変える
実践例
60代の社員に対して「余生的配置」ではなく、「メンターとして育成に関わりたい」「プロジェクト型の挑戦をしたい」など、個々の“再起動ニーズ”に基づく仕事設計を行うことで、当人のモチベーションも高まり、組織の知の循環も強まる。
商品・サービス設計を「ライフステージ」に基づいて再定義する
具体的な活かし方
• 商品や広告のペルソナ設計に、年齢よりも「今、どんなことに関心があるか」「何を始めようとしているか」という問いを加える
実践例
フィットネスクラブで「シニア向け体操教室」ではなく、「第二のチャレンジに向けて体を整える」「今こそ自分らしさを取り戻す」など、メッセージのトーンをポジティブに再設計。
社員との対話でも「年齢」ではなく「ステージ」に着目する
具体的な活かし方
• 組織内で「方向転換」「価値観の再設定」「学び直し」といった対話を促す文化を醸成するる
実践例
60歳を迎える社員向けに「これからの人生設計セッション」を実施。「どんな役割で貢献したいか」「何を学び直したいか」など、未来志向の問いで本人の意欲と組織のリソースを接続していく。
4.まとめ
本書が教えてくれるのは、人生100年時代における最大の課題は“老い”ではなく、“可能性の捉え直し”だということです。
• 年齢ではなく“いまこの人がどんな変化の只中にいるか”を起点に、対話・設計・評価を行うこと
• 長寿社会を、課題ではなく「挑戦の回数が増える社会」として捉え直すことる
この視点の転換が、ビジネスの構造を変え、社会の包容力を高めていく力になります。
あなたのビジネスでは、「何歳向け?」という問いの代わりに、「今、何に挑もうとしている人向け?」という問いが根づいているでしょうか?
これからの時代をつくる鍵は、まさにそこにあります。
5.「私の読書メモ」で紹介した本
超長寿化時代の市場地図 スーザン・ウィルナー・ゴールデン(Amazon)
カテゴリー
・私の読書メモ
Copyright Ooba Consulting Office All Right Reserved.
本コンテンツをを無断複製することや転載することを禁止します