目標達成に向けて一番最初にやるべきこと
Q.企業は人なりといわれるように人こそが企業の財産です。当社では社員とともに全社で目標を達成していきたいと考えています。新年度にあたって、社員を真に動機づけできる目標設定のポイントとその進め方について教えてください。
A.新年度、目標達成に向けて行動を開始した企業も多いことでしょう。本日は、目標設定に必要な着眼点と、貴社の社員を目標達成に導く方法をご紹介します。
目次
1.目標達成、押さえておきたいポイント
2.行動に結びつく言葉で書く
3.行動計画に見るビジネスとスポーツの共通項
4.現状にピントを合わせる
5.小さな成功体験を蓄積させる
1.目標達成、押さえておきたいポイント
「ほとんどの人が目標達成できない理由は3つある。①目標を明確に掲げないこと。②それについて学ばないこと。③それが到達可能なものだと真面目に考えていないこと」(デニスウェイトリー)新訳 成功の心理学 人生の勝者に生まれ変わる10の方法
明確な目標とは、「何を」「どれくらい」「いつまでに」の3つの要素が明確であるということです。
具体的に「何を」目標として目指すのか
これは、「仕事のゴール」となる大目標の設定と、「マイルストーン(一里塚)」となる小目標の設定に分けられます。たとえば、1カ月後までに達成すべき目標がある場合、それをいきなり達成しようとするのではなく、段階的に進めることが重要です。
そこで、1週間ごとの小目標を設定することで、より細かく進捗を管理しやすくなります。さらに、一つ一つの小目標をクリアすることで、最終的に大目標の達成へとつながるのです。
このように、目標設定の際には、大目標と小目標の関係を明確にし、段階的に取り組むことが成功への鍵となります。
「どれくらい」とは、目標の達成度を何で測るかということ
たとえば、売上目標であれば「金額」や「成約件数」、業務改善であれば「時間短縮率」や「エラー削減率」といった数値で測ることができます。
人は明確な基準が与えられない状況においては、“気楽さ”や“緊急性”に流されがちであり、結果として会社の業績に直結する『重要性』が後回しになってしまいます。
そこで、目標を「数値化」することで、具体的に達成すべき水準を明確にし、行動に落とし込むことができます。
数値化が難しい目標は、「特定化」を行い、いつまでにどのような状態になっていればよいのかを定める
たとえば、「顧客満足度の向上」を目標にする場合、「アンケートの満足度スコアを80%以上にする」といった数値化が可能ですが、それが難しい場合には「顧客からのポジティブなフィードバックを〇件以上集める」「クレーム件数を前年比20%減らす」といった形で具体的な指標を設定するとよいでしょう。
「いつまでに」とは、目標をどの期日までに達成するかを決めること
ここで重要なのは、単に「達成時期」を決めるだけでなく、「着手時期」も明確にすることです。たとえば、「6月末までに新規顧客を20社獲得する」という目標を立てた場合、4月の段階からどのようなアクションを開始すべきかを決めることで、計画的に進めることができます。
もし着手が遅れると、達成に必要な時間が不足し、結果として目標未達に終わるリスクが高まります。したがって、「いつまでに達成するのか」だけでなく、「いつから取り組むのか」まで明確にすることが重要です。
最終的に、「何を」「どれくらい」「いつまでに」をスタート前に決めておくことが、目標達成への第一歩となります。この3要素を明確にすることで、行動の方向性が定まり、具体的なアクションへとつなげやすくなります。結果として、目標達成の確率が高まり、組織全体の成果にもつながるのです。
2.行動に結びつく言葉で書く
「会社の目標や目的を明確にさせようとするとき、忘れてならないことは、行動に結びつく言葉で書くことである。」(T.レビット マーケティング論)
目標が明確になったら、次に「どのように」という「達成手段」を加えた4要素を検討します。これが計画の段階です。
たとえば、「売上を半年後までに20%向上させる」という目標を設定したとします。しかし、もし「どのように達成するのか」が不明確なままだと、具体的な行動につながらず、ただ目標が掲げられただけの状態になってしまいます。
したがって、目標を達成するためには、どのような行動を取ればよいのかを明確にしなければなりません。具体的には、以下のように達成手段を設計します。
1.戦略を立てる
・新規顧客獲得のために、デジタルマーケティングを活用する
・営業プロセスを見直し、商談の成約率を高める
2.行動プランを作成する
・SNS広告を運用し、リード獲得を強化する
・営業研修を実施し、トークスクリプトを改善する
このように、目標だけでなく、「どのように達成するのか」まで具体的に落とし込むことで、実行可能な計画となります。
また、もし達成手段を明確に書くことができないとすれば、それは目標達成の状況を具体的にイメージできていないということです。目標を実現するためには、実際に達成する瞬間を想像し、そのために必要なプロセスを逆算して考えることが重要です。
計画を立てる際には、次のような視点を取り入れると、より具体性が増します。
・課題の洗い出し:「目標達成の障害となる要因は何か? どのように克服するか?」
・優先順位の設定:「最も効果的なアクションは何か? どこから着手するべきか?」
目標を設定しただけで終わるのではなく、それを実現するための手段を明確にすることこそが、成功への鍵となります。
3.行動計画に見るビジネスとスポーツの共通項
一流のプロ選手は、イメージトレーニングを重視している
たとえば、あるサッカー選手は試合前に、自分がどのようにプレーするかを具体的にイメージするそうです。
ゴールを決めるために、相手選手の間を正確なパスで抜ける道筋、ゴールネットを揺らすボールの軌道、歓声に包まれるスタジアム、駆け寄る仲間たちの姿──これらを鮮明に思い描いた時、それはすでにゴールを決めたも同然だ、という話を聞いたことがあります。
このように、イメージトレーニングは単なる精神論ではなく、実際の行動レベルに落とし込まれた具体的プロセスです。
脳はリアルとイメージを区別せず、鮮明に思い描くことで、実際のプレーや行動にスムーズに反映されると言われています。
ビジネスにおいても、この原理は変わりません。目標達成のためには、ただ「こうなりたい」と願うだけではなく、具体的に「どのような行動をとるのか」「成功の瞬間をどのように迎えるのか」をリアルにイメージすることが重要です。
たとえば、営業目標を達成するために、
・顧客の反応や質問を予測し、それにどう対応するか考える
・契約が決まった瞬間の情景を思い描く
こうした具体的なイメージを持つことで、実際の行動が変わり、目標達成に向けた準備が整うのです。
スポーツもビジネスも、成果を出すための原理原則は同じ。目標を達成するためには、リアルなイメージを持ち、それに基づいた行動を積み重ねていくことが、成功への鍵となります。
4.現状にピントを合わせる
目標と現状のギャップを正しく評価する
目標があるだけでは行動の指針にはなりません。現在地を把握し、どの程度目標に近づいているのかを理解することが、次のステップへ進むために不可欠です。
具体的には、社長や管理者が仕事の始まる前に、社員に「今の目標は何か?」「現在の進捗はどの程度か?」を確認する必要があります。この問いかけは、単に情報を得るためだけではなく、「あなたを見ているよ」「あなたの成長をサポートしているよ」というメッセージにもなります。社員が自分の行動を振り返る機会となり、モチベーションの向上にもつながるでしょう。
軌道修正を行う
また、目標に向かっているかどうかをチェックし、もし軌道から外れていると感じた場合には、すぐに軌道修正を行うことが重要です。小さなズレが積み重なると、大きな目標未達につながる可能性があるため、早めのフィードバックと調整が必要になります。
現状を評価する際には、単に目標との差を測るだけでなく、「なぜギャップが生じているのか?」を分析することが不可欠です。ギャップが生まれる要因には、以下のようなものがあります。
スキル・知識の不足(業務遂行に必要なトレーニングが不足している)
プロセスの問題(業務フローが非効率である、優先順位が不明確である)
モチベーションの低下(目標への納得感が低い、環境が整っていない)
これらの要因を正しく分析し、適切な対策を講じることで、ギャップを埋めることが可能になります。単なる「進捗確認」にとどまらず、課題の本質を見極め、解決策を講じることが、目標達成への近道となるのです。
5.小さな成功体験を蓄積させる
大きな成功体験だけでなく、小さな成功体験にもフォーカスする
人は、小さな成功を積み重ねることで自己効力感を高め、学びを継続することができます。そして、それが仕事への取り組みのモチベーションにつながります。
そのために、冒頭で述べた「ゴール(大目標)」と「マイルストーン(小目標)」の設定が不可欠です。いきなり大きな目標を達成しようとすると、道のりが遠く感じられ、途中で挫折してしまうことがあります。しかし、小目標を設定し、それを一つ一つ達成することで、着実に前進している実感を得られます。
例えば、営業職の人が「年間売上1億円を達成する」という大目標を掲げた場合、それを達成するために「月間売上800万円」「週ごとのアプローチ件数」「成約率の向上」といった小目標を設定します。そして、週ごとの目標をクリアするたびに「よっしゃ!」という小さな達成感を味わう。この小さな成功体験の積み重ねが、自信を生み出し、さらなる努力へとつながります。
また、小さな成功を可視化し、振り返ることも重要です。たとえば、
・成果をチームで共有し、ポジティブなフィードバックを得る
・小さな成功に対して、自分自身をねぎらう(「今日の商談はうまくいった!」「顧客から良い反応をもらえた!」など)
このように、小さな成功体験を意識的に積み重ねることで、自信が生まれ、挑戦する意欲が高まります。そして、それらの積み重ねが、やがて大きな目標達成へとつながっていくのです。
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