ピーター・ドラッカー 井坂康志著【読書メモ】
産業人を考察した知的背景
本書は「マネジメントの父」と言われたピーター・ドラッカーの生涯を扱っているが、単なる伝記ではない。著者は、ドラッカーがなぜマネジメントについて考えなければならなかったのか、その実存的背景を明らかにしようとする。『もしドラ』の大ヒットに見られるように、ドラッカーの日本での受容性は1950年代から高かった。しかしドラッカーがオーストリア・ウィーン出身で、帝国の解体を見届けた後、ナチスの迫害から逃れて米国に渡ってきた「亡命ユダヤ人」である事実はあまり知られていない。本書を一読して驚かされるのは、彼を取り巻く知的ネットワークのとびぬけた豊かさだ。(ピーター・ドラッカー 井坂康志著 産業人を考察した知的背景)
感想
ドラッカーの思想は、単にビジネスや経営の話に留まらず、20世紀という時代の危機の中で生まれたものだったということが改めて分かります。彼の考えた「マネジメント」は、企業経営のテクニックではなく、人間と社会のあり方を根本から問い直すものだったのですね。
このレビューを読むと、ドラッカーがなぜ日本でこれほど受け入れられたのかも見えてきます。「もしドラ」などを通じて広まった彼の考え方は、単なるビジネス理論ではなく、現代に生きる私たち一人ひとりのあり方に深く関わるものだと感じました。
レビューのポイント
1.単なる伝記ではなく、ドラッカーの実存的背景に焦点を当てている
・彼がなぜマネジメントを「発明」するに至ったのかを追求。
・20世紀の知的ネットワークの豊かさに驚かされる。
2.ウィーンの知的サロンでの交流
・ポランニー、ルカーチ、カネッティ、ポパーなど、20世紀の著名な知識人との関わり。
・フロイト、ココシュカ、モンテッソーリとも同時代人。
3.「産業人」という概念の発見
・自由社会の担い手としての「産業人」の重要性。
・マネジメントを「売上や利益のため」ではなく、「顧客の創造」のためのものと位置づける。
4.「傍観者」としてのドラッカー
・自身のユダヤ的来歴を語らなかったが、最晩年には「未知なるもののマネジメント」を構想していた。
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