ブルースが聞こえる
取材の度、清志郎はいつも自信に満ちていた。いつも確信を持っていた。
正直、もっと考えろよ、もっと反省しろよ、と思う時も少なくなかったが、
僕がそんな事を行っても、無論耳を貸さなかった。
一度だけ、暑中見舞いに、
一言「君の意見も分かるよ」と書いてきたことがあった。
とても嬉しかった記憶がある。
清志郎には多くのことが自明の事だった。だからいつも確信に満ちていた。
(ROCKIN’ONJAPAN特別号/渋谷陽一)
清志郎らしさが感じられる一文です。
気心が知れている渋谷陽一氏ならでは言葉ではないでしょうか。
確信に満ちている清志郎、ファンの多くが彼に惹かれる点なのだと思います。
この2万字にも及ぶインタビュー集を一気に読み終えると、とても元気になります。
ど派手なメークと衣装に身を包んで歌う彼の姿は多くの人の知るところでありますが、
歩んできた起伏にとんだ道のりを知る人は少ないと思います。
起伏には、山もあれば谷もある。
困難を極めながら、谷から山を目指すヒーローの話しは珍しくありませんが、
彼のように一旦昇った山を谷に降り、そしてさらに山を目指した方は少ないのではないでしょうか。
(それもある意味、確信的に)
それを読むことができることだけでも、一読の価値があると思います。
バンドマンであり、創作者であり、表現者の話を。
「弱音を吐いたのは、3回ぐらい」と巻末のインタビューで仲井戸麗市が語っているように、
インタビューに答える清志郎の基本スタンスは常にポジティブです。
盟友たちのインタビューを通じて、清志郎の人間像も浮き彫りになっています。
昨日ブログで紹介した番組に映る彼と異なって、このインタビューの清志郎は饒舌でした。
自分の歌の世界を唄うことを通じて、自らの存在価値を問うてきた清志郎。
いまもブルースが聞こえる。
清志郎を知らない世代の方にも、おすすめしたい一冊です。
忌野清志郎1951-2009 |
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