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奇跡は軌跡に宿る

幸運なことに、僕には若いときから蓄積してきた知識と経験があり、何よりやる気があるのです。

あの大岸壁のことを頭の中で思いめぐらすとき、僕の胸はさわやかな鼓動を打つのです。

ヒマラヤの高峰ギャチュンカンに夫婦で挑戦し、凍傷で手足の指を失うという困難な状況下において

奇跡ともいえる生還を成し遂げた登山家山野井泰史氏の言葉です。

 

垂直の記憶―岩と雪の7章 山野井 泰史 (著)

 

多くのメディアでも紹介されたギャチュン・カン北壁の話は凄まじいまでの奇跡の生還の物語です。

何度読み返しても心を揺り動かされ胸に迫るものがあります。

 

数多くの登山をともにしたパートナーの妙子さんが体調の理由により一人下山する。

山野井氏は、マイナス30度の気温のなかで、右足には感覚がない状態にも関わらず、

一人頂上を目指し、2002年10月8日に頂点を制覇する。

頂きからは真っ白に一変した景色が広がり、頂点を制覇した喜びよりこれから始まる厳しい試練を予感させる・・

 

本書は、ヒマラヤの高峰ギャチュンカン(7952メートル)に挑戦した物語を含む、

7編のエピソードから構成された、最初からあとがきまで一気に読むことができる興奮の1冊です。

 

久しぶりに読み返しました。そして山野井氏が出演したDVDを続けて視聴しました。

あなたは、時々、無性に読みたくなる本や見たくなるビデオ(DVD)ってありませんか?

私にはこの本や山野井氏が出演した番組はとっておきの1冊(1枚)なんです。

 

生と死の境を分けたのは、ほんの少しの運の差だったという人もいるかもしれませんが、

常に、準備とトレーニングを積み、技術を磨き上げていたからこその生還なのだと思います。

まさに、運はやってくるのではなく、自らの手でつかみとるものということが実感できます。

 

物欲がないという山野井夫妻は、生活は質素に切り詰め、収入の大半は登山に投入しているそうです。

そして決心したら心底徹底して執着する。プロフェッショナルに必要な要件のひとつではないでしょうか。

 

オリンピックで活躍したトップアスリートにも共通していたように記憶しています。

金メダルをとりに行くといいながらも、勝つという執着さが感じられなかった日本プロ野球の代表メンバーと、

初めて金メダルを獲得した韓国の代表メンバーの対照的な姿がいい例だと思います。

 

さて、この登山で肉体的なハンデを背負うことになったギャチュンカンのダメージは大きく、

常に明るく元気な山野井氏も、一時は大きく落ち込んだと言います。

それなのに、自分の能力を最大限に発揮し行動できたことに喜びさえも感じたというのです。

 

「僕の潜在能力はもっと遠くにあるはずだ。もっと高い次元を目指したい」

「僕自身が、どうしようもなく限界に挑みたくて仕方がなかったからだ。」

 

どんなシチュエーションにあっても、プロとして自信を持って言い切りたい言葉です。

そのためには、自らを錬磨し、備えておくこと、徹底して執着できるようにしておくこと。

その大切さについて、あらためて思い起こさせてくれる1冊です。

 

あなたにとって、今しかできないこと、全力で挑戦すべきこととは何でしょうか?

奇跡は自分の辿ってきた軌跡に宿るといえるのかもしれません。

 

垂直の記憶―岩と雪の7章 山野井 泰史 (著)

白夜の大岩壁に挑む~クライマー 山野井夫妻~ 出演: 山野井泰史, 山野井妙子

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コメント

  1. おもしろいお話ですね。
    なんだかんだで最後の最後は気持ち次第なんですよね。
    そこまでやってきている時点で、
    出来る出来ないは紙一重なんですしね。
    そこで最後に必要なのが強い気持ちですね。
    応援くりっく!ぽちっ

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